糖尿病患者さんと水虫の関係とは
2017年には糖尿病有病者と糖尿病予備群の数がそれぞれ1000万人、合計2000万人を超え、糖尿病はいまや「国民病」とも言われるようになりました。
出典:厚生労働省ホームページ
糖尿病患者の増加の理由は以下のような理由があげられます。
- 高齢者の人口の増加
- 運動不足や食生活の乱れによる肥満の増加
- 糖尿病は自覚症状が出ないために気づきにくく、合併症の症状が起こって初めて糖尿病とわかる人も多い
今回は糖尿病と水虫の関係についてご紹介したいと思います。
どうして糖尿病患者さんは水虫に注意が必要?
- 糖尿病患者さんが爪水虫になる頻度は、糖尿病でない人の2.77倍
- 糖尿病患者さんの約3分の1の方が爪白癬を患っている
という統計が発表されています。
なぜ糖尿病患者さんは水虫になりやすいのでしょうか?
糖尿病の合併症の一つとして「糖尿病性足病変」というものがあります。
糖尿病で血糖値が高い「高血糖」の状態が続くと、心臓から全身に血液を送る血管の「動脈」が硬くなって血管の内側が狭くなる動脈硬化がおこります。
これによって血液の流れが悪くなって、抵抗力が低下し、細菌や真菌(水虫)などに感染しやすくなったり、傷が治りにくかったり、化膿することが多くなります。
また以下の合併症によって水虫の発見が遅れる場合があります。
- 糖尿病網膜症ー視力の低下や失明
視力が低下して、足や爪がよく見えず、変化に気づかずに水虫や爪水虫の症状を放置したままになってしまう
- 糖尿病神経障害ー痛みが感じにくくなる
足のかゆみや傷が感じにくくなって症状の発見が遅れてしまう
症状が悪化すると、足の穿孔(せんこうー穴が開くこと)や壊疽(えそー組織が壊死し、黒っぽく変色した状態)へと進行してしまいます。
水虫の発見や治療が遅れると、結果として、足の切断という事態になる場合もあるのです。
このようなことから、
糖尿病患者さんは水虫にならないように十分注意し、また水虫に感染した場合は、早期発見、速やかな治療を行う必要があります
糖尿病患者さんの水虫、爪水虫の治療

日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2016」では「足白癬、爪白癬は適時治療すること」が勧められています。
ラミシール、イトラコナゾールが主な飲み薬ですが、注意が必要なことがあります。
- 肝機能に障害がある場合は服用できない
- 一緒に服用できない薬がたくさんある
- 肝機能に負担がかかる可能性がある
糖尿病患者さんは合併症の治療のために服用されている薬も多いかと思います。
その場合は飲み薬は使えない可能性が高くなりますので専門医と詳しい相談が必要です。
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関連記事>>>気になる水虫薬の副作用とは?
爪水虫は今まで飲み薬に頼っていた症状ですが、近年になって爪水虫に効果のある塗り薬(クレナフィン、ルコナック)も処方されるようになりましたので、内服薬が使えない場合でも治療を行いやすくなっています。
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もし内科と皮膚科の連携がうまくできている病院が近くにあれば糖尿病の治療と水虫の治療がスムーズに行えるため理想的です。
水虫、爪水虫に注意する理由は、糖尿病性足病変の症状の悪化を防ぐ、そして足の切断を予防し、リスクを減らすということになります。
糖尿病患者さんと家族ができるフットケア

フットケアを習慣づけることで、糖尿病足病変の発症や重症化を防ぐことができます。
患者さんの視力が低下している場合はご家族がチェックしてあげましょう。
毎日足をチェックしましょう
足と足の裏、指の間をよく見て、傷がある時はすぐに洗って消毒しましょう。そしてできるだけ早く病院で受診しましょう。
また少しでも爪の異常、変形、角質のひび割れ、水虫やタコ、ウオノメの疑いがあればすぐに病院で受診しましょう。
足を清潔に保ちましましょう
足は毎日洗ってきれいにしましょう。
洗う前にはお湯の温度が熱くないか確認して、ぬるま湯で足全体、足の裏、かかと、そして指の間までやさしく洗いましょう。
洗った後は水分を良くふき取って保湿しましょう
足を洗った後は清潔なタオルで足の指の間まで水分をよくふき取り乾燥させましょう。
白癬菌は高温多湿、じめじめして蒸れた環境で増殖します。
爪を清潔に短くしましょう(深爪はだめです)
爪が伸びているとケガの原因になったり、白癬菌が入りこみやすくなります。
爪は柔らかくなっている入浴後に切りましょう。
爪切りは自分専用のものを使い、使った後は熱湯消毒してきれいにふき取りましょう。
その他足に関して気を付けたいこと
ケガややけど防止のために屋外や家の中で素足にならず、やや厚めの靴下をはくことが勧められています
血が付いた時に分かりやすいので白い靴下がいいでしょう
靴は通気性のよいものを選びましょう。靴をはく時は靴ずれしないように靴下をはきましょう
足に大きさに合った靴を選びましょう。小さかったり、大きすぎるものはよくありません
糖尿病患者さんが水虫にならないように予防するには?
水虫は家族から感染することが1番多いのですが、しっかりと予防をすれば感染を防ぐことは可能です。
水虫は白癬菌が足の裏の皮膚などについて、12時間から24時間かけて角質内へと侵入して感染が成立しますので、半日から1日に1回はきれいに足を洗うことが予防には有効です
市販の水虫薬クリームを週に2~3回足に塗るのも予防にいいです、念のため専門医に確認してから実践してください。
家族に水虫患者さんがいる場合は少しでも早く治療を始めて、糖尿病患者さんに感染するリスクを減らしましょう。
バスマットやスリッパは共用せず、各自のものを使いましょう。
体重計も素足で乗りますので、除菌シートでふき取りましょう。
また銭湯など公共の場所では白癬菌が繁殖しているケースが多いので、下記のような場所から帰ったきた後は足を指の間まできれいに拭くか、ぬるま湯できれいに洗いましょう。
- 銭湯、サウナ、温泉(足ふきマット)
- スポーツジム、スイミングプール、ヨガ(足ふきマットやヨガマット)
- 飲食店 (座敷、トイレのスリッパ)
- 病院の待合室(スリッパ)
など
糖尿病と水虫の関係のまとめ
糖尿病になると、脳梗塞や心筋梗塞など多くの合併症に注意しなければならなくなり、足のほうまで注意が行き届かなくなることもあると思います。
でも糖尿病性足病変の発症、重症化を防ぐためにも、ぜひ毎日のフットケア、そして水虫予防を習慣づけてくださいね。
もし水虫に感染した場合は、病院を受診をして少しでも早く治療を始めましょう。
近年爪水虫に効果のある塗り薬も登場しましたので、飲み薬に頼らなくてもよくなりました。
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「水虫や爪水虫は治らない」とあきらめずに内科、皮膚科と連携して症状が良くなるように治療を行ってください。